―――――――それから、季節は何度も巡りすぎていった。 少女といわれていた頃の面影をほとんど残し、相変わらず腰まで届く桃色のウェーブがかった髪を風でなびかせる女性は月にある今はほとんど住人がいない町の桜の並木道を歩いていた。 それは見事に咲き誇る、桃色の花弁を有す桜は、どこか物悲しさを彼女に与えていた。 戦争が終わって早幾年月。甚大な被害を被った地球もプラントもこれ以上の争いは無駄だということを漸く悟り互いにぎこちなくではあるが歩み寄るという姿勢を見せている。 勿論反乱分子はあるもので、ブルーコスモスなどがそのいい例だ。 まぁ、じきにその勢力も落ちる事は目に見えているが。 ラクスは、アスランとキラが育った街の、2人が分かれた桜の下を歩いていた。 マリューたちに預からせてもらったフロッピーは、あの後すぐパトリックに見せ、全ての評議会議員に見せた。 そして、訴えた。何が正しいとか間違ってるとか、そんなのは関係なくて。ただ思いのままに言葉を紡いだ。 どこまで戦えば、いつまで悲しめば、真の平和はやってくるのか、と。幸福に暮らせる日が来るのか、と。多くの犠牲の上に成り立つ平和は穏やかなのか、と。 結局その当時は何も変わらなかったが、それでも心に多少の疑問を残せたのは、刻めたのは事実だった。 「大分平和になりましたのよ・・・・・」 一際大きな桜の下で、ラクスはまるで誰かそこにいるかのように話しかけていた。 「お2人とはまだまだたくさんの事をお話したかったのに・・・。早すぎですわ」 不満をぶちまけても、聞くのはこの桜の木と、微かに香る匂いを運ぶ風だけ。 「・・・・・お2人に、お聞きしたいことがありましたの。ずっと、ずっと思っていて。でもどうしても口に出せなかったんです。でも、今なら言えそうな気がします」 後ろの方から駆けて来る気配がした。おそらくこの辺りに住んでいるか、はたまた遊びに来たかである。 「・・・・・・・お2人は、幸せですか?」 その言葉を口にしたとき。 風が、ラクスの頬を撫でるようにして駆け巡った。何かを訴えるように。 そして、パタパタと近づく足音を耳にしながら、ラクスは瞳に涙を浮かばせていた。 「早く早く!!折角咲いてるのに、散っちゃうよ!」 「そんなに焦らなくてもまだ散り終わるまでには時間あるぞ?」 「それでも!!これ気分の問題でもあるんだよ!分かってないなぁ・・・」 「お前にそんな事言われたくない」 何となくのりが数年前見た映像にそっくりで、気づけばラクスはこっそりとやってきた2人の子供を盗み見ていた。 「そういえばさ、昨日テレビで見てたんだけどね」 「ああ」 「もしも僕たちが互いに殺しあわないといけない状況にたたされるとするじゃん」 「・・・・・ああ」 「そんでさ、死ぬことと生きることどちらかを選ばなければならなくなったらどうする?」 「・・・・・相変わらず突拍子もない事言い出すし」 「気にしない!!で、どっち?」 「・・・・多分死ぬな。自分が相手を傷つけるならば、自分に止めを刺したい。相手には生きていてもらいたいから」 「そっか・・・・・」 「しっかしいつもの事ながらいきなりだなぁ・・・」 「いいじゃん。あ、後もう1つ質問」 「今度は何?」 「さっきの続き。もしも2人とも一緒に死ぬ事を選んだらさ、どうだと思う?」 「どうって?」 「その・・・・泣きたいかなぁ・・・・って、感情?」 「・・・・・・そうだな・・・・・」 考え込むようにして片方の少年は頭を捻る。そして。 「幸せなんじゃない?例えそれが死んだ後で、自分たちの親しい人たちが悲しむ結果となっても」 また、風がラクスへと襲った。 アスランとキラに似たような2人の子どもが、すでにこの世にはいない2人の代わりに応えてくれた気がした。 いつか、いつかきっとあの2人にあえる日が来るから。 そのとき、十分に聞きだそう。 2人が苦笑して、逃げるようになるまで。追いかけてまわそう。 もう1度聞くんだ。 ------------------------------------------------------------------------------- 終わりました。前作書いたときに描いていた話とは全く違うものとなりましたが。 それでも、ラストはこれでやりたかったのでよかったです。 長らく放置しておりました。すいません(-.-;) キャラの独白みたいな感じが多かったですね。しかもザフト寄り・・・・。 もしかすると書き直しをする日が訪れるかもしれませんが、「永遠に・・・」これにて完結です。 ありがとうございました。 03/10/26 |