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キラとアスランの遺体がプラントに持ち帰られたとき、敵対していた地球軍の艦も共に収容された。

投降、という道を選んだのは、キラの事があっただけではないだろう。アークエンジェルには、オーブの民間人も多数乗艦しているのだ。主力であるストライクを欠いた状況で、彼らを守り抜くことなんて出来ないと判断したからでもあった。

勿論、敵国であるのだから、歓迎はされないと思っていた。思っていたのだが。



「何だか・・・・・捕虜にしては扱いいいよな」

「そう、ですわね。不気味なくらい」

「・・・・・油断は禁物です。何か意図があるのかもしれません」

「ま、そう考えるのが妥当だろうけどなー」

案内された部屋で、待ち人をするアークエンジェルの上官たち。どこか緊張感が抜けていた。

マリューはヘリオポリスの学生クルーたちに託された手紙とフロッピーに視線を向け、不安を払うかのようにそれを握り締めた。



キラの遺品を整理する為に、部屋を片していた時に見つけたそれ。

まるで見つけられるのを待っていたかのように、これは置かれていたそうだ。見つけた4人はなだれ込む様にしてマリューの元に持ってきた。

中に入っていたのは、ある意味予想通りのキラからの手紙、そして、1枚のフロッピーだった。中身は、ある映像。この戦争の、無意味さを物語るようなものだった。

手紙の方は、学生クルーたちに宛てられたものだった。読み終えたとき、彼らはただただ涙を流していた。ミリアリアに至っては、泣き崩れて、トールにすがりつく形で何とか立っていた。





――――最後まで、守れなくてごめんね――――



――――結局僕は、どちらも大切で選びきれていなかった――――



――――でも、ね。彼は僕の生きてきた時間のほとんど一緒に過ごした人なんだ――――



――――だから、許して欲しいなんていえないけど、でも出来ればわかって欲しい――――



――――僕、君たちと友達になれて、本当に良かったって思ってる――――



――――本当に、ありがとう。そして、さようなら――――



「私たち、何の為に軍人になる事を選んだんでしょうね」

「さぁ・・・・でも何かを守るため、だったのは覚えてる」

「・・・・・・それが実行できていないことが悔しいですけどね」

「この映像、果たして相手は見てくれるでしょうか・・・」

「見せなきゃいけないでしょ・・・・・俺たちにはその義務がある」

「託された、義務が」



託されたものは、たった1枚のフロッピーだけど、それでもその中に含まれた願いはとても大きなもので、しかしその昔誰もが抱いていた夢。

「お待たせして申し訳ありませんでした」

申し訳なさそうに謝りながら入室してきた少女に、3人の士官たちは見覚えがあった。見覚え、どころではない。知っている。そして、自分たちが彼女にした仕打ちも、鮮明と思い出される。

「貴女は・・・・」

「先日はお世話になりました。改めまして、ラクス・クラインです」

「・・・・あ、マリュー・ラミアス大尉です」

「ムウ・ラ・フラガ大尉です」

「ナタル・バジルール少尉であります」

「そう硬くならないでください。皆さんを無理に言って呼び出したのは私なので」

「・・・・それは、どういう?」

ラクスは3人の前にあるソファーに腰を降ろすと、にっこりと、しかしどこか悲しげに微笑みきりだした。

「どうしても、お話したくなったのです。今となってはキラの話を出来るのはあなた方だけですから」

唯一自分の傍にいて、彼の話が出来た人も、その彼と共に逝ってしまった。

どこまでも不器用で、でもとても優しかったあの人。そして、優しすぎたゆえに辛い道を選択し、散っていった彼。

「・・・・・・・貴女には見る権利があるでしょうね」

「え?」

何かを見定めたマリューを首をかしげながら見つめるが彼女はそんな視線など気にせずラクスに先ほど握り締めたフロッピーを渡した。

「これは?」

「・・・・・キラ君が残していったものです。手紙は、彼と同じカレッジに通っていた友人たちに宛てた物ですが」

「ここで見てもよろしいでしょうか?」

「ええ、かまいません」

マリューからの許可を得ると、ラクスはそのまま部屋に設置されている機具へと向かった。再生できる環境がある部屋でよかった、と今更ながらに思う。

と、そのとき控えめなノックの音と共に1人の少年が入室して来た。少年、といってもその身にダークレッドの軍服を着ているのだかられっきとした軍人である。

「ラクス嬢、残りのブリッジクルーたちもお連れしましたよ」

「あ、ニコル様。ありがとうございます」

「中に入れてもいいんですか?」

「はい、お願いします。あ、その後は皆様も一緒にいてくださいません?」

「分かりました」

そういうと彼はいったん部屋から出て行き、そして次に入ってきたのは見慣れたアークエンジェルのクルーたちであった。その後ろに続くようにして入ってくるのは最初に入ってきた少年たちと同じようにダークレッドの軍服を身に纏った少年2人。

「貴方たち!?」

「艦長・・・それに大尉たちも・・・」

「どうしたんだ?」

「なんか、そのいきなり呼ばれて・・・。えっと・・・」

しどろもどろ言う彼らも、どうやらこの状況に混乱しているのだろう。

すると、準備をし終えたラクスが戻ってきた。逡巡しているクルーたちに空いている席に座らせると、同じように扉付近で待機している3人にも座るよう促した。

「一緒に見ましょう」

「・・・・・・分かった」





最初に映ったのは、顔面ドアップの紫紺の瞳。そして亜麻色の髪の少年のような少女のような1人の子供だった。

ジーっと見つめた後、突然離れて大きな声を出した。

『大丈夫、ちゃんと動いてるよ!!』

『んじゃ、そろそろ来るから玄関でお出迎えしてくれる?』

『うん、分かった!!』

映像はいきなり揺れ、がたっと音を立てて固定された。そこから見えるのは、先ほどの子供が玄関と思しき場所へと走っていく背中。

「これって・・・・・キラ?」

「だよな、女の子っぽく見えるけど、あいつに似てる」

続く映像で、待ち人がこちらの方へと向かってきた。

『早く早く!!』

『分かってるから、あーもう引っ張るなよ』

『いいから、アスランに早く見せたいんだよ!』

『ふーん。で、何を?』

『これ!!』

『これって・・・・映像を記録する機械じゃないか・・』

『部屋掃除してたらあったの。で、折角だから残しておこうと思って』

『何で?』

『今日はアスランのおじさんに初めて会えるんだから!!っとその前に、あんまり無駄に撮ってても母さんに怒られるし・・・・これで切れたかな?』

『キラ、なんかすっごく危ないぞ、手つき』

『気にしない!!そういえばさ、聞いた?ジョセアのこと』

『ジョセア・・・?ああ、セリオルを抜いたって話か?』

『うん、そう。セリオルの成績抜いたんだよ、ジョセア。んで、その後の台詞がすっごく格好よかったんだよ!!』

『それは知らない。何て言ってたの?』

『えっとね、”私が貴方たちに勝つには、貴方たちの10倍近く努力しないといけないけど、それでもそれだけした甲斐はあったわ。だってセルの悔しそうな顔見てるとこうスカッとした気分に慣れるもん“だって』

『相変わらず気の強いことで。・・・・でもだからセリオル真面目になったのか』

『みたい。でもまだジョセアに負けっぱなしだったりするらしいよ』

『・・・・・・・ま、当然の結果だろうな』

『さて、と。意外にも打ち解けてる父さんと小父さんでも撮りに参りましょうか』

『そうだな・・・って本当に打ち解けてる。酒注いだりして・・・・・父上にも感情あったのか・・・』

『それ失礼だよ、アスラン。・・・・・・・あぁ!!』

『うわぁ!?なんだよ、キラいきなり』

『これ動いたままだぁ!!さっき止めたと思ったのに!!』

『・・・・・・自業自得だな、ほれ、さっさと撮りに行こう?』

『う、うん・・・・・』

そこで一端画面は切れ、次に映ったのは、キラとアスランの寝顔だった。

『あらあら寝ちゃったみたい』

『疲れていたんでしょうね。って、何撮ってるの?』

『ん?可愛い息子たちの無防備な寝顔。いつかこれをネタに言うこと聞かせられる日も来るでしょうし』

『レノア、それ息子にすることじゃない』

『気にしない。・・・・・旦那たちも酔っ払っちゃったかしら?』

『最初からあのテンションだったみたいよ。実を言うと家の人とパトリックさんあそこまで意気投合するとは思わなかった』

子供たちの寝顔から画面は動かされ旦那たちになった。

イザークたちは、そこで見知った顔があることに言葉を更に失った。先程からのアスランにも開いた口が塞がらないというのに、今度映し出された人物は、最近見たときと180度違う人に見えた。

『何話してるんでしょうね?』

『さぁ?世界情勢とか?』

『そんなものであんなに愉快に笑わないわよ。・・・・・・どうせ子供か何か共通の趣味か』

『まぁいいんじゃない?あの人このところ地球側との交渉に上手くいってないって言ってたから、いい機会になると思うわよ?』

『そうだといいけど。・・・・・いつになったら安心して暮らせるんでしょうね』

『そうね。ブルーコスモスの話もよく聞くようになってきたし。何だか遣る瀬無いわ』

『別に貴女が気に病むことじゃないのよ?』

『でもね、やっぱり遣る瀬無いわ。同じ人間なのに、化け物扱いして。・・・・・ただの殺戮を正当化して』

『あなたは優しいわね?・・・・・・いつかはきっと分かり合える日が来る。そう信じないと始まらないわよ』

『・・・・・クス・・・・貴女らしいわ、レノア』

『さて、と。そろそろ止めないと駄目ね?』

『そうね。もう、嫌だわ』

『まぁまぁ。酔っ払いの恥ずかしい行動でもこれに納めて後日お願い聞いてもらえたりするわよ?』

『・・・・・・全く貴女って人は。とりあえず、それ切って置いて行くわよ』

『真面目ねぇ・・・・つまらないわよ』

『アスラン君にその姿見せてみたいわ。きっとアスラン君そんな姿知らないわよ』

『当たり前よ、あのこの前では隠し切ってるもの』

『レノア・・・・・』

『さ、行くわよ』





ブチっと切れて画面は再び暗くなった。

どうやら終わったようだ。しかし誰も席を立とうとも、雑談しようとも思わなかった。

4分のショックと6分の遣る瀬無さが彼らの胸中を襲っていた。

全く感情を見せなかったアスランのあの感情豊かな一面と、コーディネイター至上主義で厳しい一面しか見せないアスランの父親でもあるパトリックの意外な一面に。

また、2人の会話やその母親たちの会話から、現実の惨たらしさを再度実感してしまった。

「いつの日か、分かり合える・・・・か」

「確かに、それはずっと夢見てきたことですね。・・・・・・どちらかというと今もどこかで願ってる」

「ニコル・・・」

ニコルは自分で選んだ道の証であるダークレッドの軍服を握り締めながら両隣にいる2人にしか聞こえない位小さな声で呟いた。

「これ、預かってもよろしいですか?」

「え、ええ、かまいませんけど・・・・。でも何に?」

「唯一このビデオで話題に上って、しかもすぐ身近にいる方にお見せしようかと」

にっこりと微笑む少女の瞳は、笑ってはいなかった。



考える事がある。たくさん。本当は分かり合えるはずの存在なのに。本当はこんな道を辿らなくても良かった存在なのに。

共に同じ道を歩む事は間違いなのだろうか、いやそんなはずない。

そう、信じたい。



「今更悔やんでもしょうがない事は重々承知ですけど、悔やみたい気持ちを抑えることはできませんね」

すっと立ち上がり、機具から取り外したフロッピーを手にし、ラクスは真っ直ぐ扉へと向かった。

「どうして争いごとなど起きるのでしょう。そんな事をしても双方の血が流れるだけだというのに・・・」



「こうやって、被害が出るというのに・・・・・」

扉の前で、震える自分に言い聞かせるようにする少女は、しばらくそこで俯いた後、部屋を後にした。





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