■第5章〜運命の下〜■






「あの・・・・」

背後から声がかかって振り向くと、そこには申し訳なさそうなニコルと、目を見開いたまま固まっているイザークと、苦笑しているディアッカの姿があった。
「アスラン、僕たちのこと忘れてたでしょう?」
「・・・・・・・すまない。ところで・・」
「ああ、イザークなら貴方が声をあげて笑っていることで驚き過ぎたらしくまだ戻ってないだけです。御気になさらずに」
笑顔でさらりと言いのけるニコルに引きつりながらもディアッカはその後を続けた。
「それはいいにしてよ、そちらの金髪のお嬢さんはドチラサマ?」


「オーブのお姫様ですわ」


「「え!?」」


返ってきた言葉に驚きながら、2人はまじまじとカガリを見た。
オーブの姫様・・・にしてはボーイッシュな格好だな、とか、お姫様って言うからにはラクスと同じようなのかと思っていた、とか考えているに違いない2人にカガリは睨みつけた。
「カガリ・ユラ・アスハだ」
「「あぁ!!あのときの!!」」
2人の声が重なる。
あの時、と言うのは、オーブ近海で戦闘をしていたときアークエンジェルを守るために名乗った事だろう。カガリはあのときの事を思い出し、更に居心地の悪さを感じた。
しかし。

「ですので、私があの艦から抜け出すのに人質にさせてもらいましたの」
「え・・・・」
「もちろん、カガリの許可は頂いてですけれど。あまりにも皆さんが引っかかるから笑いを抑えるのに大変でしたわ」
「そ、そうですか・・・・」
にっこりと微笑むラクスに、言い知れぬ恐怖を感じた。

そのとき、新たな声が背後からかかった。

「では、彼女が貴女の捜していた人物ですか?」


「「「「隊長!!!」」」」


振り返ると、仮面をつけたこの艦の最高責任者でもあるクルーゼがいた。そういえばまだ報告していなかったな・・・と思いながら4人は敬礼をした。
「申し訳ありませんでした。報告の義務を怠っていました」
「いや、その気持ちも分からんでもないからな。で、ラクス嬢。質問に答えてはいただけるかな?」
「ええ。確かに彼女は私の捜していた人物です」
「そうですか」
「しかし、もう1人いますの。まだ向こうで作業していますけれど」

「・・・・・それはストライクのパイロットである・・・」


「ええ。キラ・ヤマト。その方です」


言いのけた瞬間、アスラン以外のパイロットたちは一様に顔を険しくさせた。何しろストライクのパイロットはいろいろと因縁のある相手だ。
ナチュラル如きにあそこまで手こずるなんて、とそれぞれが思っていた。出撃するときには必ず今日こそは撃破するように、と気を引き締めていた。
そのパイロットが、ラクスの捜していた人物というのは、一体・・・
「それはどういう意味で?」
「別に・・・ただそのままです。彼は近い内にあちらを裏切りますよ」
「「「え・・・・・」」」
「それで、私たち頼まれたんでしたわ。ねえ、カガリ?」
「あぁ。アスランも手伝えだって」
「・・・・・あいつ人使い荒いから、気が乗らないが・・・拒否権はないだろう」
「もちろん」
心底嫌そうに顔を歪ませながらアスランは何をすればいいのか聞こうとしたとき、ニコルが口を挟んだ。
「ちょっと待ってください、アスラン!!」
「何だ?」
「もしかしなくても・・・・ストライクのパイロットって・・・・貴方の知り合いですか?」
「ああ。親友だけど?」
「「何―!?」」
大して気にしていないようにアスランは言うと、言ってなかったな、と責任ない言葉を投げかけてくれた。もちろんその言葉でイザークがぶち切れたのは言うまでもないだろう。



「貴様!!どういうつもりだ!?」
「どういうつもりだ、と言われてもな。キラは確かに俺の親友だ」
「じゃあ、どうしてその事を黙っていた!!」
「別に・・・言わない方がいいと判断したからだが?」
「何故だ!!」
「それくらい察しろよ」
「何!?」
このままでは掴みかかる様な勢いのイザークを抑えつつディアッカはアスランの意図することに予想を立てていた。そして、それを代弁するかのようにニコルが言葉を紡いだ。
「もしかしなくとも、その彼はコーディネイター・・・・・ですか?」
「ああ、だからだ」
「なっ!!じゃあそいつは裏切りも」
イザークが言い切ろうとした瞬間、喉にナイフの切っ先が突き付けられた。驚いたように突きつけた人物を見ると、そこには笑顔を消し去ったラクスがいた。
「それ以上キラを悪く言うのでしたら、いくらイザーク様でも容赦はしませんわよ」
「・・・・・・・・・」
「確かにキラは地球軍ですが、言ったでしょう?もうすぐ裏切ると」
「それは・・・何故?」
「あの方もまたナチュラルを憎む人ですから」

それだけを告げると、ラクスはクルーゼの方を向いた。

「少々通信したいのですが、よろしいですか?」
「ええ。しかしどちらに?」
「プラントの評議会ですわ。一応裏切りを受け入れてもらえるよう体勢を整えて、と頼まれたものですから」
「・・・・・・だから俺も手伝わされるのか」
面倒くさいな、とぼやきながらラクスとアスランとクルーゼは通信を使うためにブリッジへと移動し始めた。残されたカガリやニコルたちは重い空気を広がらせながらも立ち尽くしていた。
「カガリー、貴女も一緒に来てください!ついでにオーブの方にも連絡を入れなくてはなりませんから!!」
「分かった!!!」
これ幸いとカガリは急いでラクスたちのほうに向かう。
今度こそ残されたパイロット3人は、自ずと顔を見合わせ知らず知らずため息をついた。


「一体どうなってるんだよ」


「さあ?ただ、何かが起こるな」


「・・・さっきイザークが言ってたこと、かなり当てはまっているかもしれませんね」


「何て言ったんだ?」








「嵐の前の静けさ―――――」







「おい、キラは?」
「まだ眠ったままです」
「しかし、まさか部屋で倒れているとは思わなかったな・・・・」
「確かに。しかしこれからどうしましょうか」
アークエンジェルの艦長室。
3人の重要人物たちは頭を抱えていた。何しろ先の出撃で姿を現さなかったキラを捜していたら、自室で倒れていたのだ。慌てて医務室に連れて行ったが、一向に気がつかない。ずっと眠ったままだった。
この状態で敵襲を受けてしまったら・・・・
考えても出るのは最低の結果でしかなくて。
「兎に角、早くキラ君が目覚める事を祈りましょう」
「だな」
「・・・・・・それしか出来ない自分たちに苛立ちますが」
「そうね・・・・」





未だ目覚めぬキラは医務室で死んだように眠り続けていた。






全ての計画が動き出した。

それぞれの思いが交錯し、

何を求め、

何を得るのだろうか・・・・




それを知る者は、

まだいない





嵐はもうそこまで迫っていた



後書きあります。興味のある方は反転してください↓




終わった・・・・・・・。最初に思ったことがそれです。
夕べから初めて何時間かかったんだろうが・・。
このごろ、このシリーズのキラはめちゃくちゃ書きにくいんです・・・。動かしにくいんです。
ちょっと前までは書きやすかったんですけどね。
しかもいつの間にかカガリはやられキャラに・・・(涙)
まあ、これもこれで面白いですからこのまま通しますけど。
しかし、スランプなのに頑張ったな、自分という感じです。大分解消されたようですが、このシリーズ書き難くなってしまいました。
これからもお付き合いしていただけると幸いです。
ご意見感想などありましたら、ぜひぜひBBS又はメールでお願いしますvvv
ではでは〜♪




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