ずっと見ていた
あいつが入学してきた日から
正直に言うと、一目惚れだった
だから、この部に入部すると来たとき
死ぬほど嬉しかった

けれど、君の心はまるで雲のよう
つかめそうでつかめないんだ
それが意図していることなのか否か
それでも、じっくり落とそうって
決めていた






SEED学園
第2話

〜疑心〜






教育実習生アスラン・ザラが、工学部の代理顧問となり既に1ヶ月が経過しようとしていた。

彼がこのSEED学園に教育実習生として滞在する期間は今学期の終業式の日。今はもう5月の中旬である。終業式は7月の前半。

きっとあっという間にその日は訪れるのだろう。

けれど、その時、自分を含めた工学部の部員はそれを笑顔で受け止められるだろうか。

それが心配だった。

今まで顧問を務めていてくれた先生は、本当に人がよかったものの先生としては不十分だった。名前だけでいいですから、と思わず頼んでしまったくらい機会音痴だ。

しかし、代理とはいえ現顧問のアスランは学生時代この部に所属しており、また、大学の方でも工学系を専門に勉強しているだけあってその知識もさることながら技術も並み外れたものだった。

わからないことがあれば気軽に、しかし懇切丁寧に教えてくれる。

先生として頼れる人物だと、未だ1ヶ月かそこらだというのに感じていた。



――――――工学部部長、イザーク・ジュールは。

















「やっほー、イザーク」

「相変わらず早いな、キラ」

「うん!あ、サイ」

「もう来たのか?ホント、好きだよな・・・・」



1つしたの後輩であるキラ・ヤマトは男とは思えないほどの女顔で、水面下ではこの学園のアイドルとして君臨している。

ここで、常識的に言えば変だと思うだろう。SEED学園は列記として共学である。女子生徒だってわんさかいる。現に、工学部にも2名ほど女子部員はいるのだ。

それにもかかわらずキラはこの学園のアイドルとして他者をひきつけず君臨していた。



本人の知らぬところで、だが。









「そういえばさお前今度はどんなプログラム解析してるわけ?」

「え・・・・・・あぁ、これ?」

「そう、それ」



早速PC画面に向かうキラに、サイは呆れたように声をかける。

キラは、1度集中してしまうとこちらの声は全く届かなくなるのだ。聞きたいことや話したいことがあるのならば今の内に話しておかないと話せなくなる。

イザークもまたサイの疑問には同感だったので2人に近付いた。



「んとね、もうこの部室に残ってる僕がといてないプログラムってないからさ」

「はぁ!?」

「・・・・・・・・本当か?」

「うん」



何か変なこといった、と逆に問いかけてきそうなキラにイザークもサイも頭を抱えたくなった。好きだとは言えここまでの才能があるとは。

一応そこそこ続いてきた工学部だ。活動の1つである解析すべきプログラムはたくさんある。

イザークもサイも、その全てを解析したことはない。未だ半分と少しぐらいだ。

それなのに、キラは全て解析し終えたというのだから、これが驚かずにいられることだろうか。



「そ、それで?」

「それで、ア、じゃない、ザラ先生にそれ言ったらこれでもやっときなって渡されたの」

「ザラ先生に?」

「うん。先生が作ったプログラムらしいんだけど、思いのほか難しくって・・・・・」



顔を顰めるという事はそれほど苦戦しているのだろう。イザークは思わずPC画面を覗き込んでみるが。

そこにある字の羅列を見て、固まった。一体このプログラムはなんなんだ、と叫びたくなった。

組み方が、ずべて複雑かつ独特なのである。規則正しく組んでおらずでたらめなのだ。

まさか、これをあのアスランが作ったとは思えなかった。



「ね、難しいでしょう?」

「・・・・・・・あぁ・・・・・・」



難しいどころではなくさっぱりわからない、という本心を言わなかったのは、ひとえにイザークの部長としてのプライドが邪魔したからだった。



「サイ、どうかした?」

「・・・・・別に、なんでもないよ。それにしてもキラはザラ先生と仲良いな」

「そう、かなぁ・・・・・イザークのほうが一緒にいると思うけど?」



ねえ、と話を振られイザークは振り返った。アスランがこの部の代理顧問として納まって以来確かに何かと一緒にいる。

それはわからないところを聞いたり大学の授業を聞いたり、今後の参考として聞かずに入られないからだ。他の部員に質問されたらアスランはそちらの方へ行ってしまうけれども。



「まぁ、他の部員よりかは多く一緒にいると思うが?」

「そういう意味じゃなくて、自分のプログラム渡すほど仲がいいんだなって」

「・・・・・・・・・ぇ?」

「確かに。サイの言う事は最もだな」



サイの言わんとすることが何となくわかりイザークもサイの援護をする。固まるのキラだ。孤立無援状態のキラは目を泳がせひたすら言葉を探しているように見えた。

何か、キラとアスランの間には何かあるのだろうか。

口に出してその疑問をぶつけようとしたとき、キラに救いの手は差し伸べられた。



「あれ、君達早いね」



その人物は紛れもないたった今まで噂していた人物。



―――――――――アスラン・ザラだった。



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