ひょっこりと、気配なく現れた代理顧問に、内心3人は驚きを隠せずにいた。

話に夢中、もとい、キラからアスランとの関係について聞き出すことに夢中になっていたとはいえ、誰かがこの部屋に入れば気付くはずだ。なんせ扉は閉じており、また、この扉は開けるたびに耳障りな音がするのだ。



「俺の顔になんかついてる?」

「あ、いやそうじゃなくて・・・・・」

「先生、ずっとここに?」

「まさか。そんなに暇じゃないよ、俺。今来たトコ」



イコール。

あの扉を開けて入ってきたということに繋がる。教員用の扉は、3人の前にあり、アスランが現れた逆の向きに位置するのだ。



「そ、そうですよね。い、いやあ、音しなかったから、吃驚しちゃって・・・」

「音?」

「そうです。あの扉、開けるたびに耳障りな音がするんです」



キラが指さすと、アスランもならってそちらを向く。

しばし逡巡した後、ぽんと手を打ち1人納得したように、何かを思い出したように頷いた。



「あれね、コツがあるんだよ。音たてないように開けるのに」

「えぇ!?」

「って言っても、俺しか知らないけどね。ちょっと皆驚かせたくって当時研究してみたんだ」

「け、研究って・・・・」



朗らかになんでもないようにさらりと言うが、アスラン以外には到底流せるものではなくて。

呆れたような意外なような、なんとも言えない表情になった。



「そういうわけ。で君達はなにヤマト君のPCに群がって・・・・・って」

「あ・・・・」



キラが慌てて画面を隠そうとするものの、するりとアスランはそれをかわす。そして、画面を見て絶句した。言葉が、繋がらなかった。

この画面に映るプログラムには見覚えがある。

が、しかし。

そのプログラムはもう少し規則にのっとっており、こんなにもばらばら勝つ複雑なものではなかったと記憶している。

一体これは・・・・・。



「ザ、ザラ先生?」

「ヤマト君、君って一体・・・・・・」

「えーと、その、あははははは」

「どこをどう弄ったらこんなにむちゃくちゃなモンになるんだよ!」



思わず声を荒げるアスランに、キラ以外は驚いてしまう。

どれだけ無茶苦茶であったとしても、アスランは他の生徒に声を荒げる真似なんてしないのだ。

自分たちが知る限り。

しかし、現に今彼は声を荒げ、呆れたようにキラの弁解を聞き流している。



これではまるで。

まるで、キラとアスランの間には何かあるような、

2人が特別な間柄に見えてしまうのは仕方ない事ではないだろうか。



「こら、そこ。なに固まってるんだ」

「え・・・・・ぁ」

「ジュールとアーガイルも、この際だから言わせてもらうが」

「へ・・・・・」



呆けていたら、キラの説教を終えた様子のアスランが、普段とは違い目の据わったアスランが、まるで標的を見つけたかのように話を切り出した。

そして、思った通り。

彼は2人にもがみがみと説教をし始めた。



見解として、アスランはきっといつも言いたいことを溜めていたのだろう。

どれだけ優秀でも、彼は未だ実習生の身の上だ。

まだまだ中途半端な以上、そうそうに態度の大きい事は言えない、と自分を戒めているようだ。



全く、厄介な存在である。





























数日後―――

イザークは平生の如く技術実験室に足を踏み入れた。

あれから、アスランからコツがあるといわれ、密かに自身も研究していたイザークは、同様に音を立てずに扉を開ける方法をマスターしていた。

勿論、誰にもそれは言っていない。

言った所で、どうなるものでもないとの判断の上だった。



そして、今日。それをイザークは実践していた。

普通どおり開けると、やはり耳障りな音がして不愉快な気持ちになる。ならばいっその事ずっと音を立てずに開ける方が精神的にも気分がいいのだ。

しかし。

すぐにこれを実行して後悔するとは、未だ知らなかった。





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